日産で資格が無い者による完成検査の問題が発覚し、その後にスバルでも行われていたことが発覚。
神戸製鋼によるデータ改ざんが発覚したと思ったら、東レや三菱マテリアルでも同様にデータ改ざんが発覚。
2年前の東洋ゴムでの不正発覚以降どんどん見つかっている印象があります。
自動車会社による完成検査の仕組みについて問題を提起する向きもありますし、同列に扱うべきではないとの意見もありますが、私は根本は同じだと思っています。
大きな括りで言えば日本型従来経営の崩壊です。
私はイヤだったので管理部門に籍を置いたことがなく、ずっと断り続けて現場での仕事に従事してきました。
そのために現場サイドからの視点でしか見ることができなかったので、経営者サイドからの人事・労働問題など企業法務に詳しいフォーゲル綜合法律事務所の嵩原安三郎弁護士にお聞きしました。
Twitterでのやりとりでしたのでかなり手短ではありましたが、その分要点がギュッと詰まった回答をいただくことができました。
- 経営者が現場の情報を取得できていない
- 外部の目を利用しない
- 「自分の会社は大丈夫」という根拠ない自信
嵩原安三郎弁護士はこの3点を挙げられました。
1番目の「現場の情報を取得できていない」は、現場で働いていると本当に痛感しました。
今現場で何が起こっており、何に対して困っているのか。
そしてどのようにすればそれは改善するのか。
経営者など管理側が現場の声を聞くことはまずありません。
そして声を吸い上げよう、聞く耳を持とうという行動を起こさないまま、新たな課題を現場に押し付けることが多かったように思います。
「外部の目を利用しない」は、経営者など管理職が自分たちの経営方針は正しく間違いはない。
また外部に内面を見せたくはないという心理が働くために起こるのでしょう。
「『自分の会社は大丈夫』という根拠のない自信」は前2つの理由が絡み合って、経営者や管理職に蔓延するものだと思います。
これらに加えて私はバブル崩壊やリーマンショックなどによって経営基盤が揺らぎ、こぞってリストラを行ったことが原因としてあると思っています。
単純に言えば配置転換や希望退職という名の解雇などによって人員が極端に減ってしまい、残った社員の間にも会社に対する不満が充満したのです。
元来日本では終身雇用が当たり前であり、会社は家族同様に大切なものであるとの考えをみんなが持っていました。
ところがリストラの嵐により終身雇用だからと安心できなくなり、大事な仲間がドンドン消えていくことでこれまでの会社に対する感情が一気に変化してしまったのです。
仕事の総量以上に人員が減少したので、1人あたりの仕事量は増加。
それなのに給料はカットされたりボーナスが出なかったり、会社によってはボーナスを自社製品で支給ということも行われました。
このような状態ですから現場では重苦しい空気が漂ってしまいます。
「このくらいなら問題ない」
「頑張ったって給料は上がらないし」
という意識がどうしても芽生えてくるのです。
それまでの日本人ならば手を抜かないことを信条にしてきたはずですが、残念ながらそんな心意気まで奪っていったのです。
さらにどうにかバブル崩壊やリーマンショックを乗り越えた企業は収益が向上していくことで、経営陣は高額の報酬を手にするようになります。
日産のゴーン元CEOなどがその典型です。
しかし現場で必死に耐えてきた社員はさほど給料も上がらず、悲観的になっていったわけです。
ここ数年は採用人数を増やす動きがようやく出てきましたが、現場はすでに疲弊しきっています。
「このくらいならば問題ない」
という意識が
「あと少しくらいは問題ない」
に変わっていきました。
さらに経営者や管理職側からはどんどん新たな仕事を押し付けられることで、このような不祥事が続発したのでしょう。
これは製造業だけの問題ではなく、あらゆる業種において同様の問題が引き起こされていると感じます。
顧客満足度(CS)ばかりに気を取られ、次々に注文される現場はどことも疲弊と困惑で戸惑っていますから。
「失われた20年」は経済の停滞を表す言葉としてよく用いられていましたが、ようやく脱しつつあるようです。
しかし現場では「失われた20年」はまだ現在進行形なのだということを、今回の不祥事続発は物語っているのです。