まずは概要から。
2017年11月22日に開会した熊本市議会で起こりました。
本会議が始まる午前10時前に、生後7か月の長男を抱いて会議場の自分の席に着いた緒方夕佳市議。
この長男を出産した4月以降、出産後の体調不良を理由に欠席していて、この日は8か月ぶりの本会議出席だった。
彼女は妊娠が判明した昨年以降、乳児を連れての出席や託児所を設置するよう議会事務局に申し入れしてきた。
しかし前向きな回答を得るには至らなかったため、今回子連れでの議会参加へ踏み切った。
「議員や職員以外は傍聴人とみなす」
「傍聴人は会議中に議場に入ることができない」
と市議会の規則で定められているところであり、議長が規則に則り退場を促した。
緒方市議がこれを聞き入れず、別室で協議を行い長男を友人に預けることで合意。
これにより40分の開会遅延が生じた。
働く女性は今後も増加していくことは確実でしょう。
その一方では待機児童問題に代表されるように、都市部での保育所等の不足も顕著になっています。
女性がもっと活躍できる社会の構築のためには、待機児童という言葉が無くなる必要は当然あるわけです。
働く女性の中には、普段は子供を親などに預けているのだけど、たまたまその預け先が病気や急用のために預けられず困った人は相当多いと思います。
そんな時に、今回の議員のように職場へ連れていければどれほど助かるかと感じた方も多いですよね。
これは本音の部分として当然ある感想ですよ。
もっと手軽にその日だけとか、1時間だけ預けられる保育施設があれば便利ですよね。
仕事以外でも上の子の学校の用事の時間だけとか、核家族が当たり前の都市部では一時保育施設の需要は相当高いはずです。
また職場へ子連れでの出社が寛容されるような社会になれば、それは本当に素晴らしいことだと思いますよ。
そういった意味では議会へ子連れで入場した緒方夕佳市議の行動は、社会に一石を投じたと言えますね。
しかし緒方夕佳市議の行動がすべて認められるというものではありません。
市議会議員という立場の人間が、事前に市議会へ通告もなくルール違反をしたという事実は許されることではありません。
そもそもルールを守れない人間が議員を続けるべきではありません。
また熊本市の資料によると、2016・2017年度ともに待機児童は0となっています。
もちろんすべての方が希望する預け先ではないかもしれません。
緒方夕佳市議は議員としてすべての女性が希望する預入先に子供を預けることができるように、議会において問題提起するのが本来の仕事です。
参考【報道資料】待機児童の状況について(平成29年4月1日現在) / 熊本市ホームページ
また妊娠が判明した昨年以降、乳児を連れての出席や託児所を設置するよう議会事務局に申し入れしてきたが前向きな回答を得られなかったとしています。
実はこれには理由があり、議会事務局側は議員を特別扱いできないためだとしています。
都市部のごく一部の企業には施設内に託児所を設けているケースもありますが、あくまでごく一部であり、保育所を探して子供を預けるのが一般的ですし、緒方夕佳市議だけを例外にするなんてできるわけがありません。
もし熊本市議会内にこの申し出により議員用の託児所を作れば批判されて当然ですからね。
今回の報道のあとサイトやTwitterなどでは、海外の女性地方議員は子連れで議会に参加しているという意見が出て、その様子を写した画像をよく目にしました。
もちろん日本でもそうなれば良いのですが、欧米をはじめ海外の地方議会では認めざるを得ない状況だからとも言えるのですよ。
地方議員を本職としていないためで、ほかに仕事を持っていたり専業主婦だったり、中には会社をリタイヤして老後の余暇で地方議員の活動をしている方がほとんど。
そして海外の地方議員の多くはボランティアだったり、交通費や日当が出る程度のケースが大半です。
そして仕事を持つ方でも参加しやすいように議会を夕方以降に開催されるケースが多いです。
もちろん子供を連れていても参加できるようにしているわけです。
ボランティアで参加しているママさん議員に、子供を預けるための費用を自腹で出費させるわけにはいきませんからね。
それに対して熊本市議会議員はボランティアや日当で働いているのではありません。
議員は月額674,000円の報酬をもらっています。
もちろんボーナス(期末手当)ももらっています。
自宅から議会までの距離が4km未満でも日額5,000円の交通費をもらっています。
これだけもらっていれば、緒方夕佳市議自身で子供を預けるための保育園などを探し、自腹でその費用を払うことってふつうじゃないですか?
参考熊本市議会議員の議員報酬、期末手当及び費用弁償に関する条例
少子化問題と女性の活躍、育児や待機児童問題など問題は山積されています。
今回緒方夕佳市議が投じた問題はたしかに波紋が大きくなっています。
著名人の中には自分の仕事場へ子供を連れてきてもよい、といった声も広がってはいます。
しかしどのような職場にでも、子供を連れてきて仕事をしてもよいとは絶対になりません。
危険性や子供への衛生面での不安も感じますしね。
それともう一つ。
緒方夕佳市議が市議会へ向かって子供を連れて歩いている様子が、ニュースで放映されていました。
事前にテレビ局へ通知していなければ撮影はされていないはず。
明らかに子供を利用した作戦だったと言わざるを得ません。
残念ながら議員としての行動とはかけ離れた、勝手な行動だったと非難されても仕方ないものです。
ですので議員としては失格なのだろうと私は思います。