事故の概要は
2019年2月、東京都⼤⽥区の国道の交差点を自転車で渡っていた男性を、乗用車ではねて死亡させた事件です。
自転車の男性は赤信号で横断歩道を渡っていた。
乗用車の運転手(80歳)は制限速度が60㎞/hのところを34㎞/hオーバーの94㎞/hで走行していた。
交差点の手前50m付近で信号が黄色に変わるのを確認したが、そのまま直進を続けた。
事故直前に雨が降って道路は濡れている状態だった。
検察側は⻩⾊信号の⾒逃しが過失にあたるとして昨年10⽉に在宅起訴。
被告側は⻩⾊信号で安全に停⽌できない場合は停⽌線の通過が認められているとして無罪主張。
東京地裁の村⼭智英裁判官は
「直前の⾬で道路がぬれ、急ブレーキをかけてもスリップする危険があった」
と指摘。
また実際に走行していた94Km/hではなく、60km/hで⾛⾏していたとしても事故は回避できなかった恐れがあるとして、運転者に対して無罪判決を言い渡した。
たしかに赤信号で渡っていた自転車に大きな非があるけど
交差点ではねられた自転車は信号を無視して渡っていたわけで、この一件で最も大きな非は自転車側にあります。
歩行者であろうと自転車であろうと、赤信号を無視して交差点を渡る側に大きな過失があることは否めません。
しかし雨で濡れている状態の道路を、制限速度を34km/hもオーバーして走行したことは運転者側に非があります。
そして50mも手前で信号が黄色になったことを認識しているのに、そのまま交差点を突っ切っていること。
たとえ自動車側の信号機が青または黄であっても、横断する人や自転車があれば危険を回避するためにブレーキを踏む必要性もあると思います。
さらに
通常60km/hで走行している自動車の停止距離(空走距離+制動距離)は37mで、これは道路が乾いている状態での距離なのですが、磨耗タイヤの検証(JAFユーザーテスト)によると、雨で濡れていたとしても60km/hで走行時の制動距離は数m伸びる程度となっており、裁判官が指摘する
「実際に走行していた94Km/hではなく、60km/hで⾛⾏していたとしても事故は回避できなかった恐れがある」
という点には疑問が残ります。

たしかに濡れた路面でとっさにブレーキを踏んだ場合
「直前の⾬で道路がぬれ、急ブレーキをかけてもスリップする危険があった」
というのは分かりますが、だからといってブレーキをかけることなく交差点に進入したことはどうなのだろうか。
“ブレーキを踏んだがスリップしてしまい、間に合わずに衝突してしまい死亡させてしまった”
のならば仕方がないのかなと思うのですが。
さすがに無罪は無理があるような気がする
「自転車での交通事故|自動車と自転車での事故対応・過失割合まとめ」から抜粋しますが、自動車保険の過失割合でいうと
自転車側の信号が「赤」で自動車側の信号が「青」の場合の過失割合は
自転車が「80」に対して自動車は「20」
自転車側の信号が「赤」で自動車側の信号が「黄」の場合の過失割合は
自転車が「60」に対して自動車は「40」
あくまで自動車保険での過失割合なので、刑事裁判での判決とは当然異なります。
しかし一般的には自動車側にも「非がある」「過失がある」と判断されるわけですから、さすがに無罪判決は無理がありすぎます。
最近は自転車の無謀な運転による事故も多発していますし、今回の件のように赤信号を守らずに交差点を渡るというのは非難されて当然の行為です。
でも自動車側も一般道を34Km/hも速度超過して運転して衝突したのに、全く責任が無いと判断されるのはおかしいと言わざるを得ません。
偏り過ぎた判決
そんな風に思いました。