横浜地裁の敷地内で裏側の出入り口前に止められている1台の車。
ナンバープレートはガムテープで覆われていて、車内の内側からは何やら多量の張り紙がされている。
こんな車は警察へ通報してレッカーで移動してもらえ!
普通の感覚だとそう思うわけですが、実はそれが不可能なので世の多くの人が困っているのです。
あなたが所有している土地に勝手に車を止められている場合で考えてみます。
道路上であれば道路交通法によって警察は動くわけですが、私有地に関しては警察は動いてくれません。
民事不介入の原則があります。
なので警察へ通報しても特に何もしてくれません。
ひょっとすると、無断で止められている車のナンバーから所有者を探してもらえるかもしれませんが。
ちなみに車体の半分が私有地にある場合、車体の半分が公道上にあっても私有地に止められているとして扱われ、警察は手を出すことができません。
個人でレッカー業者に頼んで移動させることはできますが、小さな傷が入ったり、レッカー移動が原因で故障したなんてことになると損害賠償を請求されることに。
車に「無断駐車禁止」なんて書いた張り紙を貼れば、器物損壊罪に該当する可能性が高い。
無断駐車は罰金5万円をいただきます、なんて看板を見かけるかもしれませんが、実は無断駐車側はこの看板に従ってお金を支払う必要はなく(そもそも契約を結んでいない)、5万円なんて言う法外な金額を要求されたと逆に恐喝被害を訴えられる可能性もある。
裁判所に訴えたところで
「私有地に無断駐車された車を、地権者(土地所有者)が勝手に移動することは認められない」
なんて判決が車を止められた横浜地裁で出ているようですし。
明文化されているわけではないけど、「自力救済の禁止」という前提が日本の法律にはあるためらしいです。
これ私有地への無断駐車だけではなく、例えばあなたの家の外壁に勝手にポスターを貼られたときに、あなたが破いて捨てると器物損壊罪に該当する可能性が高い。
勝手に貼られたとしても、そのポスターの所有権が無断で貼った側にあるとも考えられるため、剥がすまでは良いけど破ると器物損壊罪に該当する可能性が高いという、なんとも理不尽なことになっています。
横浜地裁前の謎の車ですが、横浜地裁自体が自力救済の禁止を判決で出しているため、地裁がこの車を勝手に移動させることは事実上不可能です。
まさか自らが言い渡した判決に背くような行為はできませんからね。
なのでどういう風に解決していくのか、かなり注目しています。
地裁が今後行う方法を無断駐車や無断駐輪で困っている人は参考にできますからね。
ただ言えることは
これは司法(裁判所)の問題ではなく立法(国会)の問題です。
速やかに法改正を行い、私有地を勝手に利用する側へ的確に対処できる法律を制定して、地権者が泣きを見ないようにすることが絶対に必要ですからね。